森田の映画記録

観た映画を記録していきます。

15 あん / 河瀬直美

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万引き家族樹木希林がいとおしすぎたので、樹木希林みたさに観ました。

万引き家族を観て思ったことなんだけど、安藤サクラ樹木希林がキャッキャするだけの映画すっごい観たくない? 「メタモルフォーゼの縁側」とかぜひ安藤サクラ樹木希林でやってほしいんですけど。安藤サクラは重たい映画が似合うけど、でもなんか万引き家族の「お姉さん よく見たら綺麗ね〜」「えへへ」みたいな会話ばっかりしてる二人を観てえ〜。

 

あれ? あんの話してないや。

 

主人公は借金持ちで、どら焼き屋で雇われ店長みたいなをして頑張って借金を返してるんだけど、ある日、樹木希林がきて、バイトとして働きたいって言い出す。やだ〜って思うんだけど、作ってきたあんこがめっちゃ美味しかったので働いてもらうことにする、樹木希林樹木希林なので周囲をホッコリさせまくる。でも樹木希林は実はハンセン病に感染している。 それが噂で広まってしまって人が来なくなる、樹木希林が店を辞める、なんのかんのあって樹木希林が死ぬ、店長、なんのかんの頑張ってやっていくぞ〜と決意する! みたいな話。

 

ハンセン病は現在、免疫があれば感染しない病気らしい。結核ぐらいの感染力なんだって。赤ちゃんとかだと感染するかもしれない、みたいな。知らなかった。

 

個人的には、その程度の感染力の病気の人が店で働いてることより、タバコ吸ってる人が食べ物作ってるっていうか、勤務中にどんちゃかどんちゃかタバコ吸ってるっていうのが信じられなかったけどな。嫌じゃない・・・? せめて勤務終了後に吸ってくれ。ニコチン依存症の深刻さを知らしめる映画だった(いや、そういう映画ではない)。

 

そんでそこそこ都会っぽいのに、ハンセン病の人がいるっていう噂回るの早くない?! 私だったら、ママ友とかいないから、「クッソうめえんだよなこのどら焼き屋!!!!!!! サイコ〜〜〜〜〜〜〜!!! ツイッターに書こ、あ住んでるところバレるからダメか?!!! はあクッソうめ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」ってアホみたいに買い続けてしまいそう。ママ友のいないママばかりが住んでいる地域で売っていれば間違いなかっただろうに、残念だなあ・・・。

 

 いやこの映画、ちょっと考えてみたんだけど全然感想が思いつかない。なんか樹木希林が温かいものをみんなの心の中に残して死ぬ映画なんだよね。でもそれだけなんだよね。冷酷なので感動の方法がよく分からなかった。

 

あ! ハンセン病の差別はよくないという映画か。それについては、確かに、ハンセン病について自分は知識がなかったと思ったので、よかった。ホッコリ映画(?)でこういう知識がつくのは嬉しいことだ。ハンセン病について知ろう、と思って勉強するのは、パワーがいる。ああ、差別とかについて考えさせる映画ってこうあるべきなのかもな・・・。観終わって、感動して、それでなんとなく知識がついてるみたいな。

 

でもさ、でもさ、なんかさ、「差別はいけない」みたいなのって誰でも分かってることで、でも問題は「差別とは根本的に何なのか」っていうのについて誰も分かっていない、みたいなことだったりしないだろうか。これを観た人が、じゃあ実際にハンセン病の人を目にしたときにどう行動するかとか、っていうかハンセン病の人とどう接するべきなのかとか、そもそも「ある病気にかかっている/かかっていない」っていうのがその人のアイデンティティをそこまでキッチリ形成してるのか? っていうか、「ハンセン病患者の人にはこう接する」みたいなのがあっていいのかとか・・・。そういうなんか、その人の他者に対する態度そのものが変化するのかみたいな。うーん。うまく言えないんだけど。

 

あとは私は、なんかいつも考えてることなんだけど、前も書いたんだけど、

10 不都合な自由 / リン・シェルトン - 森田の映画記録

「社会的なハンディキャップを負っているけど、一芸のある人なので/性格がいいので、社会に受け入れてもらえた」みたいなのってなんか怖いなあ〜と思うんだよな。だってさあ、自分に置き換えて考えるとさ、この映画の樹木希林はさ、10代で家族から引き離されて、ずっと、人里離れた隔離施設で生きてるんだよ。そういう環境で生きてきて、それでもあの樹木希林ぐらい優しい人に育てるかっていうのよく分かんないよ私は。なんで私なんだよなんで私なんだよってイライラしながら生きるかもしれない。でも映画で観るのはニコニコしてるハンセン病の患者の人ばっかりじゃん。「こういうハンセン病の患者だったら愛してあげますよ」みたいに、マジョリティが、「差別をしてるんじゃなくてあんたの性格が嫌いなだけ、もっといい性格のハンセン病患者だったら愛してあげるのに」って安心するための道具、に使ったら嫌じゃない? って思うんだ。

 

じゃあどうすんだ、すげえ殺伐とした映画つくんのかよ、そんな映画誰が観るんだよ、って感じなんだけど・・・。共感もできないし、イライラするだけの、社会的ハンディキャップを負った人でも、それでも救済されないといけないし、楽しく生きていければいいと思うんだよね。終わり。