森田の映画記録

観た映画を記録していきます。

19 ワンダー 君は太陽 / スティーヴン・チョボスキー

www.youtube.com

 

 

監督と脚本がウォールフラワーの人か〜。ウォールフラワーはいい映画だったよね。美女と野獣の脚本も書いてるんだね。いい仕事しかしないって感じの人だね。監督した作品がまだ3作目なのか。次回作とか決まってないのかなあ。

 

ワンダーいい映画だった。シング・ストリートの切なさみたいなのを全て解消して、ハッピーエンドに持ち込んでいく力強さがある映画だった。歌わないんだけどgleeとか観たときの感じに近いかも。みんなが闘いながら生きてて、その過程で傷つけあったり、全く偶然に仲良くなれたりして、最後はよかったねで終わるみたいな。

 

急に対比のためにシング・ストリートの話をしだすんだけど、シングストリートは、ゴミカスみたいな生活をしていた主人公が、音楽の力で立ち直って、最後は新天地に大好きな恋人と旅立つぜ、みたいな話なんだけど、主人公のハッピーエンドのために必要不可欠なのが、主人公と全く同じ境遇だった主人公の兄。

 

主人公の兄が音楽大好きで、その音楽知識を聞いたから主人公は音楽始められて、それから女の子の落とし方とかも相談に乗ってくれて、最後、新天地に旅立つためにお見送りとかもしてくれるんだけど、兄もやっぱりゴミカスみたいな生活しかできなくて、ドラッグやってて、音楽も辞めちゃってて、弟は兄の助けがあったから、まあ反面教師もあってなんとかなったけど、兄はもうどう考えてもこの生活から抜け出すのは厳しいよな、っていう感じ。でも、それでも、主人公が新天地に旅立つのを見送ったあと、兄はすっごい全身全霊のガッツポーズをするのね。その兄のガッツポーズで映画が終わるという感じなんだけど。

 

兄もまあ言ってしまえば若者なんだけど、妙に大人ぶって、人生を全部かけた自己犠牲をして、なんの義理もない弟に生きろという、みたいな感じが、無性に悲しい。いい映画だなと思ったわけだけど。

 

ワンダーも、そういう映画なのかなあと最初思って観ていた。主人公のオギーは難しい病気で、何回も手術をして、ようやく健康に生きられるようにはなったんだけど、顔がまあちょっと「ノーマル」とは異なる。でも、普通の子と同じように、お姉ちゃんがいて、犬を飼ってて、お父さんとお母さんがいて、スターウォーズが好き。

 

まあこういう映画で、オギーが誰からも受け入れられずにボロボロになって自殺するみたいなオチは考えられないから、オギーはみんなから愛されるんだろうなと予想しながら観るんだけど、ああこの家族はお姉ちゃんキツいよな、と思う。お姉ちゃん、弟が手術しまくってるのとか、赤ちゃん返りもしづらいし、寂しかっただろうな〜とか思いながら観てる。

 

と、なんと、お姉ちゃん視点の物語になるの。「私もお母さんに自分のことを観てほしい」と。あっ、いい映画だ! と思った。

 

ところが、この映画はそれだけじゃなくて、オギーの親友になった男の子とか、お姉ちゃんの親友とかにも視点が移っていく。映画でここまで綿密に人のバックグラウンドが描けるんだなあと感心した。映画だし、長くて2時間しかないから、ストーリーを追いかけつつ人物像の掘り下げもするって大変だと思うんだけど、ちゃんとストーリーは進んでいくし、いつの間にかラストシーンになってる。すごいなあ、巧みだなあ、と思った。

 

観ながら、次はどの子の心情を掘り下げてくれるんだろうな〜と思って、映画が終わって欲しくなかった。誰もが闘っているのだ。ドラマで観たい内容だった。こういう誠実な人間劇みたいなのはgleeを観てウットリしていたあの頃そのものだー。年齢的に、恋愛要素とかが入ってこなくて、gleeほど・・・こう・・・複雑な感じにはなってなかったけど。

 

ただ、いじめっ子の描写とかは中途半端に終わっちゃったなあという印象。いじめっ子の親とかはもうなんか意味わからん悪役みたいに描かれていて、すごく残念だった。あのシーンは浮いてたなと思う。「みんなのためにも死ね」とまで言ってのけた子が、どうやったらオギーと仲直りできるんだろうって考えてたら、あっさり転校してしまった。転校(と、それに伴って、今までの友達を全て失うこと)がいじめっ子にとっての「罰」みたいになってて、そこも残念。罰を与えればいいというものではないと思った。

 

総じて、映画で、あそこまで「あらゆる登場人物が、その行動をとるバックグラウンド」みたいなものについて描こうとしたのは、すごい挑戦だなと思う。でも、まあ、そうはいっても、映画でそういう試みをするのには限度があるし、二つの学校(お姉ちゃんの学校とオギーの学校)を舞台にしてたら登場人物はどんどん増えるわけで、全ての登場人物について根拠を与えるのは難しい。だからドラマでやってほしいなと思った。

 

原作読んでないから、原作に忠実なのだと言われればそれまでなんだけど、いやいや、2018年に映画を作るとき、たんに「原作に忠実に作る」って意味ある? ないと思う。2018年的なメッセージを込めるべきで、だからこそ、いじめっ子には罰を、制裁を、この世界からの退場を、でもって「解決」とするのは、なんだかよくないなあ〜と思った。それって「差別主義者は殺せ」っていうのと異なるのだろうか、「差別主義者がこの世から存在しなくなったらいいのに」っていう願望をマイルドな形で叶えると「いじめっ子が退学になったので学校が楽しくなった」っていうことになるんじゃないのかな。

 

いい映画だったけど、そこだけ残念。でも子役ちゃんたちみんな演技鬼ウマ&可愛すぎだったから、是非是非ドラマで続きを観たいよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!