森田の映画記録

観た映画を記録していきます。

10 不都合な自由 / リン・シェルトン

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ロッテントマトで95点だったんだけど、誰もレビュー書いてる人がいなくて、まあ観てみるかと思って観た。雨の日向きの映画だった、きょうは雨だから、観てよかった!

 

殺人事件の冤罪で18歳で刑務所に入り、38歳で仮釈放になった男(クリス)の、出所後の話。彼が出所できたのには、彼の高校時代の教師が早期釈放を訴え続けたという背景がある。彼の家族は、彼が収容されているとき面会にも来なかったけど、この教師だけは面会に来たり、電話で話したり、絵を描いたり、いっぱいコミュニケーションを取ってた。

 

この教師は女性なんだけど、釈放後、クリスはこの教師(もちろん20歳ぐらいは歳が離れている)に好きだと告白する。教師はこの告白が嬉しいんだけど、彼女には夫と娘がいる。もともと家族は崩壊気味で、だからこそ「家族を壊せない」と彼女は彼からの告白を拒絶。

 

登場人物が全員人生うまくいってなくて、お金持ちが一人もいなくて、ものすごいグジャグジャなこのパターンはグザヴィエ・ドランのマミーっぽいなあと思って、ドキドキしながら観てた(マミーすごい好きだけど)んだけど、オチでちゃんとクリスに新しい人生と、新しい人生を歩み出すための材料が与えられていてホッとした。

 

つらつら思ったことなんだけど、こういう映画で、社会的なハンディキャップ(今回は「元受刑者」というレッテル)を負った人が、もう一度社会でやっていこうとするときに、一番必要なのが「その人の人間的魅力」みたいになっちゃうと、キツいなと思う。ハンディキャップはあれども、人間として憎めないから、みんなが彼の周りに集まってくる、みたいなのって、現実世界でどれほど応用可能だろうと思う。

 

昨日、新幹線で斧を振り回した男の子のニュースがあって、その男の子は22歳で、自閉症で、自分のことが嫌いだったらしい。すごい悲しいことだと思った。自閉症の人にいわれのない偏見を向けたことのある人は、彼を批判する資格がないなと思う。彼が自己肯定感を低めたのは、「むしゃくしゃ」したのは、彼の人生が、人との関わりの中で感じたそうとうなストレスが原因なんじゃないのかと思った。

 

もちろん別にそういうことじゃないかもしれないし、彼のやったことは絶対に許されないことなんだけど。例えばクリスがもう全然人として愛せないとか、マジでムカつく野郎だとか、そういう前提があったとしても、やっぱりクリスがちゃんと幸せでいられるような結末というのは描けるんだろうか。そういう結末を描くことは、クリス以外の誰かが傷つくことになるんだろうか。