森田の映画記録

観た映画を記録していきます。

7 ペンタゴン・ペーパーズ / スティーヴン・スピルバーグ

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メリル・ストリープトム・ハンクス主演の映画。観にいく前に絶対に絶対に大統領の陰謀が必修!って感じ。観てから行くとローグワン的な感動が味わえる。

 

まだ地方紙だった時代のワシントン・ポストメリル・ストリープの父親がワシントンポストを経営していて、でも死んで、夫に引き継がれたんだけど、夫は自殺しちゃって、で、ワシントン・ポストメリル・ストリープが社長になった。というわけで、どんな記事を載せるかとかの最終判断はメリル・ストリープが行う。

 

でも、まあそういう経緯だというのもあって、メリル・ストリープは男たちから軽んじられて、意見はないものとされて、「口出ししないでほしい」とか言われるし、ばかにされるし、ふさわしくないと思われてる。

 

でもメリル・ストリープはそういうのに憤ったりしないの。まじで普通の、傷つきやすくて、45とかで初めて働いた、超主婦。息子も娘もいる。息子はベトナム戦争に行って、帰還した。

 

ベトナム戦争が泥沼である、勝てるわけがないと政治関係者の誰もがわかっていた、でも「敗戦国アメリカ」という称号を手に入れたくないがために戦争がつづけられている、ということを詳細に書いた最高機密文書が流出して、ワシントン・ポストはそれを入手する。当時の大統領であるニクソンはなんとしてでもその流出を食い止めたい。記事を載せて、ニクソンが裁判で勝ったらワシントン・ポストで働いている全員が投獄される。

 

ドチャクソ男社会の中で、意思決定を最後に行ったのが、すごく「感情的な」メリル。「私の息子はベトナム戦争に行った、知り合いの息子もベトナムに行った、どうして政策が失敗だと分かっているのに止めなかったんだ、そんなのfraudだ(って言ってたよね?)」と。すごく「家庭的な理由で」、政治的な判断がなされる。で、それが結果的にいいことだとされる。結局こういうことなんだよなと思った。

 

「男性的な」意見で、名誉がどうとか、政治の駆け引きがどう、とかで全てを決めてたら、いつか人類は死に絶えちゃうよーと思う。統治者じゃない人が統治者目線で話しても意味ないんだよな。日本ではなぜか統治者目線の人がいっぱいいるけどね。経営者目線とか。

 

いきなりガッと「息子は」とかの地点に戻って、強い意見を言えるメリル。すっごい演技上手だった。強い女性じゃないし、まあでもなんか言われてすぐにメソメソ泣いちゃうような弱さもない。ムカつくことを言われたら影でなんなん? って言うけど、まあでも対面だったら曖昧に笑うほうが楽。

 

そういう女性が、何十人もの人を路頭に迷わせるどころか逮捕させるかもしれなくても、それでも機密文書を報道する、と決めること。もーーすっごいよね、すごい大変。ゴミみたいに軽んじられてきたけど、それでも「全部私の責任でやります」って言い切る。大変なことだよ。

 

要所要所で痺れるセリフを言うのが全部女性っていうのもよかったね。「役者の中で女性を何パーセント出せ、みたいなルールを作ったら、男女差別が目一杯あった時代の映画は撮れなくなるじゃないか」みたいな意見を見たことがあるけど、ドチャクソ男女差別があった時代の作品でも、こうして「硬派な」「フェミニスティックな」映画として成り立っている。やるなあと思った。上手な脚本(脚本家の卵だった人を電撃採用したっていうエピソードも好き)。

 

本の森友・加計学園の問題と絡めて観るべきなのだろうけど、ふと「アメリカでは司法がきちんと正しい判断をしたけど、日本で司法は政権に忖度しないだろうか・・・」とちょっと不安になった。

 

ニクソンが辞任したきっかけがペンタゴン・ペーパーズの流出ではなくて、ウォーターゲート事件だったというのもなんとも。語弊があるかもしれないけど、民主党本部に不法侵入することよりもずっと、ベトナム戦争をやめなかった罪のほうがずっとずっと重いと思うな。

 

それにしても、人間は別に歴史に学んだりはしないものなのだなと今の日本の現状を見て思う。「これは報道してもいけそうだ」と他社に思わせたのは、多分にデモの力もあるんじゃないかなあ? と思ったり。そういうわけで、デモにちゃんといくぞ、と思いました。

 

いい映画だった! ところでレディ・プレイヤー・ワンはどうなんでしょうねえ・・・。なろう系っぽくない・・・?